「配当控除」という制度があります。
これは、株式などの配当所得を確定申告した場合に適用される控除制度です。
通常、株式の配当は、法人が課税された後の利益を株主へ配当するものです。
この配当にさらに課税すると二重課税になってしまいます。
これを調整するために一定の税額を控除する制度として設けられたのが配当控除です。

株式だけではなく投資信託から受ける分配金についても、確定申告をすることで配当控除を受けることはできますが、投資信託の種類(株式組入比率や外貨建資産の組入比率など)によっては受けられない場合や控除比率が異なる場合があります。

配当控除は、株の配当金や投資信託の分配金を受け取って確定申告すれば必ず受けられるわけではありません。
「総合課税」による申告をした場合に限られます。
またケースによっては配当控除を受けない方が得になることもあります。

☆投資についての情報はこちら
優良な新生ジャパン投資

配当控除を行わないとどんな損をする?

税務署

株式の配当所得の納税方法は大きく分けると次の3つあります。

「申告不要制度」
確定申告を行わないで源泉徴収のみで行うものです。
この場合、税率は一律20.315%になります。
「総合課税制度」
配当以外の所得と合算して計算する方法です。
この場合は配当控除の適用を受けることができます。
「分離課税制度」
配当以外の所得と合算せず、別々に分けて計算する方法です。
この場合は株式売却損を配当などと損益通算をすることができます。

この3つの方法のうちどれが最も有利なのかを検討しなければなりません。
ではどのようなケースで、「配当控除」の適用をしたほうがいいのでしょうか。

次の条件に当てはまる場合は、確定申告して「配当控除」の適用を受ければ得をすることになります。

  • 所得額が659万円以下の場合
  • 配偶者控除を受けている専業主婦で、他に所得がなく株の売却益や配当所得の合計額が38万円以下の場合

所得額は「課税所得」のことです。
課税所得とは、所得税を計算するために必要な金額で、簡単に言えば「収入金額」から「収入から差し引かれる金額」を控除して計算します。

「収入金額」とは、事業を営んでいる場合はその事業にかかわるすべての売上高、サラリーマンの場合は給与、賞与、その他手当など合計額、また株式譲渡益、株式配当金や不動産譲渡益、その他の一時収入などです。

「収入から差し引かれる金額」は、事業を営んでいる場合は原材料費と必要経費、サラリーマンの場合は給与所得控除です。
給与所得控除は「年末調整のための給与所得控除後の給与等の金額の表」に表示されています。
ただしこの表に当てはまるのは給与収入額が660万円までで660万円を超すと自分で計算しなければなりません。

「収入から差し引かれる金額」はこれだけではありません。
「保険料」「配偶者控除」「扶養控除」「医療費控除」や「寄付金控除」など定められたさまざまな控除があります。
収入金額からこうした控除金額の合計を差引いて計算します。

通常、株式の配当は源泉徴収されて受け取ります。
この源泉徴収の税率は、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%合計20.315%です。
上記の2つの条件に当てはまる場合には、確定申告し配当控除の適用を受ければ、この配当に対する税率が下がり得をすることになります。

控除される税率

では「配当控除」の適用を受ければどれ位税率が控除されるのでしょうか。
控除される税率は、所得税10%、住民税2.8%合計12.8%です。
なお所得額が1,000万円を超過した額には、所得税5%、住民税1.4%、合計6.4%が控除されます。

所得税は、所得額が多くなれば税率が上がる「累進課税」です。
そのため所得金額によって、配当控除後に下がる税率は変わってきます。
では具体的に所得金額によってどの位税率が下がるのか、見ていきましょう。

  • 所得額が330万円以下では、12.905%控除され、7.45%に下がります。
  • 所得額が330万円を超え695万円以下では、2.905%控除され、17.45%に下がります。
  • 所得額が695万円を超す場合には、配当控除すれば逆に税率は20.135%より高くなることになります。
  • 配偶者控除を受けている専業主婦の場合も、20.315%から7.45%に下がります。
    ただし所得金額が38万円を超すと、ご主人が配偶者控除の適用を受けられなくなりますので注意しましょう。

配当所得がある人で、所得額が695万円以下の場合、または専業主婦で他に収入がなく配当所得が38万円以下の場合、総合課税を選んで確定申告し「配当控除」の適用を受けないと損しますよ。

ただし総合課税で確定申告すると、配当が他の所得と合算されるため所得額が増え、国民健康保険料などが変わり負担が増える可能性がありますので注意が必要です。

損をしたときこそ確定申告を行なう

確定申告

株式売却損が出た時、配当と相殺して所得額を減らしたい、また損失額が大きく配当で相殺しきれなかった場合は、翌年に繰越して相殺したい、これは誰もが考えることです。

2008年の税制改正で、2009年1月1日から株式の売却損と配当金を相殺、「損益通算」することができるようになりました。
これにより配当金を受け取る時に源泉徴収されていた税金の還付を受けることができるようになりました。
また株式だけでなく公募株式投資信託の換金による損失も、確定申告すれば配当金と損益通算ができます。

証券会社と「源泉徴収あり特定口座」で取引している場合には、口座を通じて発生した株式売却損は年末に配当と損益通算され、源泉徴収の過納分は翌年還付される制度になっています。
確定申告などの手続きも不要です。
ただし損失額が大きく配当で相殺しきれなかった場合は、確定申告が必要となりますが、これは後ほど説明します。

「損益通算」

一年間の利益と損失を相殺することを「損益通算」といいます。
例えば複数の証券会社と取引していたとします。
A社の取引で50万円の利益が出たが、B社の取引では20万円のマイナスが出たケースで考えてみましょう。

まず損益通算しなった場合の納税額は、A社では利益50万円に対する源泉徴収が101,575円、B社では0円、合計101,575円になります。
一方、損益通算した場合は、A社の利益50万円とB社の損失20万円を相殺した利益30万円に対する課税となりますから60,945円で約4万円少なくなります。

こうした複数の証券会社と取引しているケースや「源泉徴収あり特定口座」以外の口座で取引していて株式売却損が出た場合、また「源泉徴収あり特定口座」で損失額が大きく年間取引が赤字になった場合には、必ず確定申告しなければ損失と利益の損益通算及び損失額の繰越はできません。

また損益通算を行うには、自分で確定申告することが必要です。
またここで重要なのは、申告にあたっては「総合課税」ではなく「分離課税」を選らんで確定申告することです。
総合課税では損益通算ができない制度となっているからです。
総合課税で確定申告をした後、修正申告して分離課税に変更しようとしてもできないルールですので注意しましょう。
「配当控除」と「損益通算」を同時に行うことができない制度です。

証券会社では、年間取引報告書など申告に必要な資料を提供はしてくれますが、確定申告の手続きは少々めんどうでも自分ですべて行わなくてはなりません。

株式売却損を配当所得で相殺しきれなかった

株式売却損を配当所得で相殺しきれなかった場合、確定申告の手続きをすれば損失額を3年間繰り越すことができます。
ただし証券会社を通じて行う上場株式の売却損に限られます。
なお非上場株式の売却損は、損益通算はできますが繰越はできません。

この株式譲渡損の繰越を行う場合にも自分で確定申告することが必要になります。
大事なことは、損失が生じた年に必ず確定申告することです。
これで損失額を翌年以降(最長3年間)繰越すことができます。
損失が生じた年に確定申告しなかった場合には、翌年以降に申告しても損失の繰越が認められません。
また損失が生じた年に確定申告した場合でも、翌年以降も連続して毎年確定申告しなければ、損失と配当の損益通算ができなくなりますから気を付けましょう。

証券会社の「源泉徴収あり特定口座」で取引している場合で損失額を翌年以降に繰越したい時も、損失が生じた年に確定申告することを忘れてはいけません。
通常、証券会社の「源泉徴収あり特定口座」で取引している場合、源泉徴収して配当を受取るため納税手続きがいらないため、確定申告の手続きをわすれがちになります。
損失が生じた年に確定申告しなかった場合には、損失額は翌年以降に繰り越されていませんので、翌年、損益通算を行うことができなくなります。

配当控除をして得をするパターン

株式や株式投資信託で賢く節税する方法を具体的な事例にもとづいて見ていきましょう。

株式と株式投資信託で節税する主な方法は、「配当控除」「損益通算」「損失額の繰越」の3つです。
どの方法を選べばいいのか、どのように組み合わせるのか、自分にとって有利な方法、簡単な方法を考えていきましょう。

配当控除

まず「配当控除」です。
配当控除をしないほうがいいケースがあります。

  1. 所得額が695万円を超えるケースです。
    配当控除された金額より多額の所得税が課されることになるからです。
    源泉徴収のままにしておくほうが得になります。
  2. 課税所得額が695万円以下であっても国民健康保険に加入している方は、配当控除される金額と配当を所得に合算して申告することによって増える保険料を比べて見る必要があります。
    かえって負担が増えるケースも考えられます。
  3. 株式や株式投資信託の取引で損失が出たケースで、損失額が配当控除で還付される税金より多くなれば配当控除ではなく、損益通算の方法を選んだほうが得になります。

損益通算

次に「損益通算」について見てみましょう。
株式の売却損や投資信託の売却損がでた時、確定申告して損失を他の利益で相殺し所得額を減額することが「損益通算」です。
さて、どのようなケースで損益通算できるのか、またできないケースにはどのようなものがあるのかを見ていきましょう。

「株式」と「株式」の場合
株式の売却損と配当は損益通算できます。
また証券会社の同じ「源泉徴収あり特定口座」内での取引であれば確定申告も不要です。
「源泉徴収なし特定口座」内の取引では、年収2,000万円以下の会社員で損益通算した利益が20万円以下の場合も確定申告は不要です。
なお、複数の証券会社や証券会社内の複数の口座での取引で損益通算する場合には確定申告が必要になります。
「株式」と「株式投資信託」の場合
株式と株式投資信託の損益通算はできます。
確定申告の要、不要は「株式」と「株式」の場合と同じです。
「株式」の損失と「給与所得」の場合
株式の売却で出た損失を給与所得と損益通算することは出来ません。
課税方法がことなるからです。
株式の場合は分離課税で一律20.315%の税率ですが、給与所得は累進課税で所得金額によって税率がことなります。
こうした課税方式のことなる場合には損益通算はできません。
これと同様に課税方式のことなる金融商品では損益通算はできません。
複数の証券会社と取引がある場合
複数の証券会社と「源泉徴収あり特定口座」で取引があり、1社では利益が出て、他社でマイナスがでた場合には、必ず確定申告しましょう。
申告して損益通算しなければ本来払わなくてもよい税金を利益が出た証券会社で源泉徴収されたままになるからです。

損失額の繰越

次に「損失額の繰越」について見てみましょう。
損益通算してなお損失額が残る場合、3年間に限って繰越すことができます。
そこで次の点に注意しましょう。

  1. 繰越できるのは上場株式の譲渡損に限られています。
    非上場株式の譲渡損は、損失が発生した年には損益通算できますが、翌年への繰越はできないルールです。
  2. 必ず損失が生じた年に確定申告しなければなりません。
    損失を繰越すには、損失が生じた年の翌年3月15日までに確定申告しなければ認められません。
    損失が生じた翌年に前年度の損失額を当年度の利益と損益通算する確定申告をしても認められないということです。

確定申告は、「総合課税」ではなく「分離課税」で申告することが重要なポイントです。
「総合課税」では損益通算ができないルールになっているからです。
また、繰越した損失を3年間まで繰り越して損益通算できますが、そのためには毎年、損益通算をしない場合にも連続して確定申告することが必要です。
例えば、損失を繰越した翌年も赤字で相殺できなかった時にも確定申告しなければなりません。
連続して確定申告していることが必要条件となっています。